エチオピア:EV化推進に追い風。巨大水力発電ダムが完成(2025年10月8日)

1. エチオピアの国家プロジェクト「GERD」完成

2025年9月9日、エチオピアのアビィ・アハメド首相は、グランド・エチオピアン・ルネサンス・ダム(GERD)の完成式典を開催しました。同ダムは、エチオピア電力公社(EEP)が主体となって2011年に着工し、イタリアの建設大手Webuild社(旧Salini Impregilo社)がEPC契約で建設を請け負いました。
GERDは首都アディスアベバの北西約700km、スーダン国境に近い青ナイル上流部に位置し、幅1.8km、高さ170m、貯水容量740億立方メートルを有しています。ダムの両岸には2か所の水力発電所が設置され、発電容量は計5,150MWに達します。これはエチオピアの既存発電容量(4,460MW)を上回り、日本で言えば四国電力(5,336MW)の総発電容量に匹敵する規模です。

2. 再生可能エネルギー100%の発電構成

EEPによると、GERDがフル操業に入る前の段階でも、エチオピアの発電源は水力91%、風力7%、地熱1%、バイオマス1%と、すでに再生可能エネルギー比率が100%となっていました。今後の発電設備増強計画を見ても、水力・風力・地熱・太陽光・バイオマスが大半を占めています。

3. ガソリン輸入が外貨繰りを逼迫

一方で、エチオピア経済は大幅な貿易赤字が続いており、ガソリンなどの石油製品の輸入が外貨事情を逼迫させています。2023/24年度の貿易収支を見ると、輸出額38億ドルに対し輸入額は184億ドル、実に146億ドルの輸入超過となっています。輸出品目はコーヒーや花、豆類、植物種子など一次産品が中心である一方、輸入では輸出額全体にほぼ匹敵する35億ドルもの石油製品が目立ちます。
アフリカでナイジェリアに次ぎ第2位となる1.3億人を有するエチオピアの人口は、国連によると2050年には2.3億人、2100年には3.7億人まで増加すると見込まれています。このままガソリン・ディーゼル車が普及し、石油製品の輸入が増加すれば、すでに脆弱なマクロ経済の安定性をさらに損なうおそれがあります。

4. 高い再エネ比率を背景にアフリカでEV化が加速?

こうした背景を経て、エチオピア政府もEV化を推進しています。政府は、2023年12月に債務不履行(デフォルト)に陥ったことを受け、2024年1月にEVを除く自動車の輸入を禁止する措置を発表しました。国内ではすでに約10万台のEVが走行しているとの報道もあり、実際、アディスアベバで配車アプリを利用すると高い確率でEVが配車されます。
IEAによると、アフリカには発電源に占める再生可能エネルギー比率が80%を超える国が8か国、50%を超える国が13か国存在します。こうした再生可能エネルギーへの依存度が高いアフリカ諸国では、EV化が想定よりも早く進展する可能性が十分にあると考えられます。

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(Source)エチオピア電力公社(EEP)IEAWebuild社、現地報道・現地情報ソースより