エチオピアEV市場の台頭と課題:現地視察から見えた可能性

DFPは10/14-16にエチオピアの首都アディスアベバにて開催されたAfrica E-Mobility Week2025(以下AEW2025)に参加・登壇いたしました。 
AEW2025はアフリカ全土で進むモビリティトランジションを加速させることを目的に、Africa E-Mobility Alliance(AfEMA)と国連環境計画(UNEP)が共催で開催され、脱炭素化を推進するグローバル企業、スタートアップ、投資家、政策立案者など、33カ国以上から350名を超える代表者が参加しました。DFPはAfEMAと戦略的パートナーシップを構築しています。コンファレンスではUNEPの招待により投資促進をテーマにしたパネルディスカッションに登壇いたしました。また、コンファレンス参加に加え、主要EV関連施設の視察や関係者とのネットワークを実施しました。 

背景

エチオピアは長年にわたり貿易赤字に直面しており、石油製品の輸入額は年間およそ35億米ドルで、同国輸出総額(約38億ドル)に匹敵します。こうしたエネルギー依存の軽減は国家的な優先課題であり、2024年1月には、世界で初めてEV以外の新車輸入を全面禁止する政策を導入しました。導入から約2年が経過し、安全性や地域間格差などいくつかの課題が残る一方、都市部を中心にEV普及が急速に進んでおり、アディスアベバでは現在10万台を超えるEVが実走しています。エチオピアはアフリカにおける先進的なEVトランジション事例として、政策・産業の両面で注目されています。 

アフリカEV市場への投資機運が加速

このような背景からEV需要がアフリカで急上昇する中、同セクターへの投資も拡大を続けており、2030年までに総額10億米ドルを超えると予測されています。この潮流を受け、現在の投資動向と資金調達拡大の促進をテーマに、弊社CEO武藤がパネルディスカッションに登壇しました。UNEP、急成長中のスタートアップ(BasiGo、Ampersand)欧州復興開発銀行(EBRD)、南ア政府系ファンド(IDC)の代表者とともに、アフリカのEV産業の将来像について議論を交わしました。武藤は「メイド・イン・アフリカの産業育成」の重要性を強調し、持続的な成長には現地産業への包括的支援とグローバル企業との協業が不可欠であると述べました。 

現地関連施設を視察 

また、現地では、アディスアベバの主要EV関連施設(EV組立工場や政府のデータセンター、充電インフラなど)を視察しました。コンファレンスではEU諸国からの関係機関や企業の参加が目立った一方で、現場レベルでは中国EV企業の存在感が際立っていました。 

  • Ethio TelecomとHuaweiが共同運営するAI活用型の無人四輪EV充電ステーション。(写真左上)
  • Winline TechnologyによるEVバス向け充電施設。(写真右上)
  • Golden DragonによるEVミニバス組立工場。(写真左下)
  • 市内ではBYDなど10万台を超える四輪EV車両が走行。(写真右下)

エチオピアの大胆な政策の背景 

EV関連施設の整備状況からも、エチオピア政府がEV導入を国家戦略の中核として位置づけていることが明確にうかがわれました。また、EV政策と並行して、首都アディスアベバでは都市化が急速に進んでいます。道路や建築物の整備は行き届いており、デザインや構造の精度も高く、ヨーロッパや中東の都市を想起させる街並みが広がっています。こうした発展の背景には、アフリカで唯一植民地支配を免れたという歴史的自負と、キリスト教の信仰に根ざした誠実で勤勉な国民性が感じられました。

今後の示唆 

エチオピアを含むアフリカ諸国では、まだ市場が成熟していない段階であるにもかかわらず、中国EVメーカーが低価格・大量供給を武器に急速にシェアを拡大しています。現地工場では、「日本製品は品質が高いが、その分価格が高く、中古品でも購入しにくい」との声も聞かれました。 他方で、伊藤忠商事エチオピア事務所長・信田氏は「低価格な中国製EVは安全性などの面で懸念があり、日本の高い安全基準を持つ製品が求められている」と指摘。また、在エチオピア大使館・柴田大使も「現在エチオピアは中国企業への依存度が高いものの、政府としても一国依存が長期的なリスクになるとの危機感を持っている」と述べられました。 これらの意見や現地視察を通じ、日本製品の安全性・品質に対する信頼と潜在的な需要は依然として大きいことを確認しました。 
しかしながら、現時点でEV分野の技術開発と市場拡大においては、中国および欧州勢が明確に優位に立っています。このままの状況が続けば、日本が長年強みを持ってきた自動車産業は、数年以内にグローバル競争において大きな構造変化を迎える可能性があります。 

このような環境下においては、官民連携による市場形成と、制度的支援を活用した持続的な産業構築が鍵となります。エチオピアはすでに日本との間でJCM(二国間クレジット制度)を締結しており、クリーンエネルギー移行に向けた具体的な協力の基盤があります。DFPは、こうした政策的枠組みを活かしながら、日本政府および日本メーカーが有する高い技術力を、アフリカ現地の政府機関・スタートアップと結び付け、現地産業の発展を支えるエコシステム構築に取り組んでまいります。 

今後もDFPは、大陸を超えたネットワークと現地に根ざした知見を活かし、事業機会と社会インパクトの同時創出に貢献してまいります。